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Ⅰ.歌

 1.歌について考える


―――むかしから、歌うことが大好きだった。
 うちはあんまり裕福ではなくて、弟妹たちの世話もあるし、贅沢なんてできなかった。
 でも、歌うことはできた。
 歌いながら食事を作り、歌いながら選択し、歌いながら木の実を採った。
 哀しい時も、楽しい時も、歌にぎゅっと詰め込んじゃって、喉を震わせるだけでよかった。
 だから、あたしは歌が大好きだった。


―――正直、歌そのものを好悪の対象にしたことはなかった。
 それは、自分にとって、食事のようなものだったし、食事であれば、美味しい方が良いと思う、それだけのことだった。
 別に、自分で歌いたいとも思わない。ただ、誰かの歌を聞くことが、自分にとって必要であった、それだけのこと。
 正直、歌は必要だけれど、それと同じぐらいどうでもいいものだった。

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